煙草が好きだ。タバコの香水

投稿者 : 田中太郎 on

タバコ香水

※無類のタバコ香水好き、ジョージ(@Ichix0w0x)さんによる寄稿記事です。記事内の香水のほとんどは当店での扱いはございません。読みものとしてお楽しみ下さい。※ジョージさんによるお酒香水の記事はこちら

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煙草が好きだ。

 煙草の香りが好きだ。火をつける前の葉の香り、それを包む紙の匂いの匂いが好きだ。音を立てて火をつけたときの最初の一口、喉から鼻に通る葉の辛みや苦味、それを感じるのが好きだ。

 いつから煙草の匂いが好きなんだろうと振り返ってみれば間違いなく周りにいる喫煙者の影響だろうと思っているが、香水に注目して言えば高校生の頃からだったように思う。

 ブルガリのブラックジバンシイのウルトラマリンカルバンクラインのエタニティフォーメン。これらを使う事が多かった。当時は煙草の香りだと思って使用していたわけでは無いのだけれど、メンズラインの香水は自分に合ってるような気がして使っていた。

 それが煙草の香水を求めるようになった。多分二年前か三年前のことである。切っ掛けはなんだったか。ちょっとだけ自分語りにお付き合い願いたい。

 ハッキリ覚えてるのはオルファクティブ・ストゥディオのクローズアップと出会ってからだ。

 幾つかサンプルを頂いた時に混じっていた中の一つに過ぎなかったのに、サンプルを使い切る頃にはすっかりこの香り無くてはならなくなってしまった。コーヒーに煙草、チェリーにムスク。青い虹彩を写した写真をイメージした香りなだけあって、付ける度主張する香りが変わる。カメラのファインダーを覗いてフォーカスした時みたいにくっきり分かる香りが付ける度に違う。そこがいい。今では愛用の香水はと聞かれるとクローズアップをまずあげるようになっている。

 トムフォードのタバコバニラ、それからペンハリガンのラドクリフに出会ったのも決め手だったように思う。どちらもタバコと甘い香りが組み合わさっている。この辺りで学習したのは『煙草と甘い香りの組み合わせって最高だな』ってことである。バニラの香水を持っていた時もあったのだが、バニラエッセンスをぶちまけたような甘い香りは自分の肌の上では甘さに拍車が掛かりとても長いこと付けてはいられなかった。

※編集注…ラドクリフは廃盤。香りの詳細はこちら

 しかしタバコと組み合わせると甘さがくどくない。タバコの他の香りを色々と試すうちに、タバコの香水はバニラと組み合わされることが多いことに気が付いた。これは多分、トムフォードのタバコバニラの人気に影響があると思う。なんなら海外では堂々と『コレはトムフォードのタバコバニラに似た香りです!』と説明書きされた香水まで出ている始末だ。いい香りなのは分かるがそう堂々と書いていいものなのか……どの辺にオリジナルな部分があるのか気になるところでもある。

 さて、そうしてタバコの香りを色々試すうちにタバコが入った甘い香りだけではなくタバコが入った他の香りにも惹かれるようになってきた。グリーンな香りからウッディな香り、タバコの香りと言っても様々ある。

 中でも衝撃を受けた香りが幾つかあるので紹介したい。


 先ずはミラーハリスのフューイユドタバック。ミラーハリスのイメージって花があしらわれたデザインでボタニカル。率直に言えば若い女性向きなブランドだと思っていた。現にティートニックなんか紅茶の香水として人気があるイメージ、当時はこのイメージだった。それが、店頭でたまたま出会ったフューイユドタバックはかなりそのイメージとかけ離れていた。キリッとした針葉樹の葉の香りとタバコの葉の辛さ、そこからチリチリと火がついて煙がもくもくと上がってるような。紳士が咥えた葉巻の香りをイメージする。なんというか、女性的なイメージがあっただけに手にしたボトルは突然紳士。周りは繊細でお茶目な香りだったり華やかな香りのボトルの中にいきなりイギリス紳士の香りが現れた。コレにはびっくりした。びっくりし過ぎて買ってた。何よりトップの尖った香りが好みだったのだ。甘くなくていい、タバコの香りが欲しいと言う人には良くオススメする香水である。

 次に名前をあげるなら、KOUSHIのキレーサシリーズからア シガースタブである。先人から試させて貰った時、真っ先に思ったのは『ギリギリ綺麗な香りだ!』だった。タバコと言えば、吸った後のあのなんとも言えない嫌な匂い。アレに近い。喫煙者である自分もあの香りは好きだとは言いきれないものがある。しかし不思議なことに、他者の纏うタバコの残り香は好きだ。よくある市販の紙巻きタバコ。アレに火を付けて灰になった後の香りに似ている。ムエットで嗅いだら多くの人はきっと笑った後ボトル購入までは至らないと思う。でも肌に乗せた途端、その吸殻が格好良く香る。キレのある柑橘とタバコが合わさって吸殻に似た香りの奥に、レザーが現れるところがその理由だと思う。ムエットで感じるよりもキリッと、綺麗に感じるのだ。これは唯一無二の香りだなと思って酔いの勢いで購入したのはいい思い出。カッコイイタバコの香りを求めてます! けど紳士を感じる香りは気が引けるって人にはオススメしたい。

 次はタバコはタバコでも煙管から煙立つような香り、トバリのスモークフラワーだ。今はサウザンドカラーズとブランド名は変わってしまっているが、トバリの頃に購入したのでトバリと表記させて頂きたい。トバリは実在した人物をイメージして作られた香りが多く、スモークフラワーは高尾太夫をイメージして作られている。知性と色気がテーマなのだそう。煙管から立つ煙が大きく開く花の花弁にまとわりつくような、少しスパイシーで華やかさと煙さを感じる香り。タバコと花の組み合わせは他にもあるけれど、この香りはベースにトバリ特有のザラっとしたお香のような香りが相俟って独特な世界観がある。和を感じるのに古風では無いところや気だるげな華やかさを感じるところに驚いた覚えがある。知性と色気をテーマにしてると聞けばちょっと気後れしてしまうのだが、この香りは他に中々無いのでは、と思い購入に至った。体感だけど女性からのウケはかなり良いように思う。勧めることも多い。

※編集注…サウザンドカラーズ版のスモークフラワーはこちら

 最後にあげるのは個人輸入して出会った香りから、シニスラボのブラスフェミー。シニスラボと言うのは海外のハンドメイドサイトで知ったアメリカのブランドだ。タバコの香水を探すうちに辿り着いたのだが、ブランド自体も面白くすっかり推しになってしまった。何よりボトルのデザインがいい。キャップが胸像を形どっていて名前も調香も尖ったセンスをしている。他の香水も面白くオススメしたい所だが今回は割愛。

 ブラスフェミー、翻訳すると『冒涜』だ。タール、ウィスキー、タバコと革、スパイス。説明文に書かれている匂いを並べるとこんな感じ。実際付けてみると不穏な暗さを持つシトラスから始まり、ざらりとしたウィスキーやタバコの香りが出てくる。最後はシスタスが主張し残る、始終暗さを持つ香りだ。デザインも相俟ってめちゃくちゃ尖ってる。これを買った時、海外にはこんな香りもあるんだ! と感動した。だってこんなに振り切った香り、出会ったことない。シニスラボに出会ってからは個人メゾンを漁るようになったように思う。お陰様で面白い香りに出会う機会が多くなった。


 この三、四年のうちにニッチな香水やその情報が多く入ってくるようになり、それに連れて自分のコレクションも多くなって来た。今並べたものはその一部で、他にも『酒場に人を詰め込んで酒と煙草、体臭と黒い煙が入り交じった香り』だとか『分厚い手の皮から香るタバコと二スとレザーのリアルな香り』だとか。あげていけばキリが無い。こう書くとタバコの香りってやっぱりなんだか近寄り難い、と思われてしまうかもしれないが纏いやすい香りもある。サンタマリアノヴェッラのトバッコトスカーノ一九六九のチャイニーズタバコモンタルのブルーマッチャキャロンのタバックシリーズなんかは全体的に甘いか爽やかでウケが良いのでは、と思った程だ。ただし自分の感覚なのでそれが正解かは分からないが。

 ともあれ、受け入れられやすい香りから尖った香りまで様々ある。これはタバコだけではなく色んな香料に言えることだろうが、自分はタバコに注目している。タバコに注目するだけでもこんなにも幅広く出会えるのだから、本当に面白い。いつの間にかどっぷりと煙草の香りの持つ魅力にハマってしまっていた訳だ。何でこうなったんでしょうね、と何度も自問自答しつつ香水を愛でている。

 ここで言いたいのは私はその筋の専門家でも無ければ全くの素人。ただタバコの香りに惹かれてるだけの香水好きである。そんな身ではあるが出来ることなら、少しでもたくさん色んな煙草の香りに触れたいと思っている。

執筆者:ジョージ(@Ichix0w0x)
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